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企業であれば法人税、個人事業主では所得税を算出するために、事業にかかった費用を「経費」として帳簿に記録していく必要があります。
レンタルサーバーやドメインを事業に活用していれば、もちろん利用料を経費とすることが可能です。
ただ、帳簿への記録処理を行う以上、「科目」を割り振る必要があり、それは支払先の「借方」、支払元の「貸方」両方にあります。
企業の場合は経理担当が理解している・知っていることもあるとは思いますが、個人だと経理経験や知識が無いと難しいかもしれません。
また、状況によっては、年度内で処理を完結できなかったり、費用の一部までしか計上してはいけないという場合も存在します。
本記事では、実際にどのような科目で処理できるのかということから、注意点や特殊なケースも合わせて、レンタルサーバーやドメインを経費に計上する際のやり方をお伝えしていきます。
レンタルサーバーやドメインの勘定科目
レンタルサーバーやドメインを経費として計上する場合の勘定科目は用途によって異なります。
たとえば、データを保管しておくためだったり、ホームページを作るためだったりというような用途があります。
あまりにかけ離れた勘定科目で経費計上することはいけませんが、ある程度用途に合った科目で計上しておけば、問題はないでしょう。
また、個人事業主などであれば、そこまで経費が大量に発生するものではないことが多いと思いますので、独自の科目を立てて計上することもできます。
ただし、経理処理には一貫性がないといけません。
一度ある勘定科目で計上したものを、翌月には別の勘定科目に変えて計上するということはできないので、あらかじめどの科目で計上するべきかを定めておくことをおすすめします。
では、実際にどんな科目で計上するのが良いのか、よく使われている科目を例に解説していきます。
通信費で計上する
インターネット代や電話代などで使われることの多い「通信費」はレンタルサーバーやドメインの利用料にも適用することができます。
社内用データサーバーとして使用しているなど、内部での管理を行うために使用しているのであれば、特に適切な科目になるでしょう。
レンタルサーバー、ドメイン共にインターネット関連であるために科目としても問題なく、使いやすいもののひとつです。
借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
---|---|---|---|
通信費 | 5,000 | 現金 | 5,000 |
ただ、通信費は「切手代」や「郵便物の送付代金」を計上することもあり、経費として計上するものが多くなりがちです。
後々経費を見直した際に、レンタルサーバーなどにかかった費用を見つけづらいということも考えられますので、もしホームページを運営するためにレンタルサーバーやドメインを利用しているというのであれば、次に解説する「広告宣伝費」として計上した方が良いかもしれません。
広告宣伝費で計上する
サービスを紹介するホームページやブログなどを運営している場合は、集客するためにレンタルサーバーなどを利用しているということになるので、「広告宣伝費」の科目が適しています。
集客のためにどれくらいの費用がかかり、効果はどれだけあったかというように見直しがしやすいため、通信費ではなく広告宣伝費として計上した方が良いと考える人も少なくはないでしょう。
借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
---|---|---|---|
広告宣伝費 | 5,000 | 現金 | 5,000 |
ホームページを運営しているという条件があるものの、サーバーとドメイン両方の費用をまとめて広告宣伝費として計上できるので、こちらもおすすめの科目になります。
支払手数料で計上する
ドメインは基本的に1年ごとの更新となるため、その際に発生する更新費であったり、自身でサーバーを利用するのではなく、ホームページ作成をやアプリ開発などを委託して作業してもらう場としてレンタルサーバーを契約したりという場合には「支払手数料」という科目で計上することもできるでしょう。
借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
---|---|---|---|
支払手数料 | 500 | 現金 | 500 |
新規ドメインであれば、数百円から数千円で購入でき、更新時にも例に近い程度の金額になるので、ドメイン費用の計上には適しています。
しかし、レンタルサーバーを1年間通しての長期契約を行った際の金額を「支払手数料」として計上するのは、あまりよろしくないかもしれません。
レンタルサーバーのプランによって金額は変わりますが、10万円規模での支払いを手数料として計上してしまうと、税申告の際に不審に思われかねないので、それであれば「通信費」として計上した方が良いと思われます。
また、後述しますが、銀行振込などで別途手数料がかかる場合は、これも「支払手数料」として計上することになります。
但し書きをきちんと残しておかないと、支払手数料の記録がかさんで、帳簿の内容が分かりにくくなる恐れがあるため、レンタルサーバー利用料の科目としては合わないかもしれません。
賃借料で計上する
サーバーを「レンタル」しているため、「賃借料」として計上することもできます。
FXの自動売買を行うためにVPSを借りたり、エンジニアの開発環境として利用するといった用途であれば、この科目が適しているかもしれません。
年間契約でも違和感がない科目であるので、上記の用途で長期契約する場合には便利な科目です。
借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
---|---|---|---|
賃借料 | 20,000 | 現金 | 20,000 |
なお、ドメインは購入して取得するものであるので、賃借料という科目には適していません。
ドメイン費用も計上するのであれば、「通信費」もしくは「広告宣伝費」の方が使いやすいため、「賃借料」で計上する人はそう多くないと思われます。
支払い方法による貸方科目に注意
個人の青色申告であれば、先に述べた勘定科目とかかった費用や収入を記入するだけの「簡易簿記(単式簿記)」で済むこともありますが、企業または個人で一定額以上の所得がある人の場合は「複式簿記」による計上が必要となります。
「複式簿記」とは、かかった経費に対して、「現金」や「普通預金」などを「貸方」として計上していく方法になります。
企業であれば基本的に複式簿記で帳簿をつけていくことが多いと思いますが、個人の場合は税の控除にを受けるためにいきなり「複式簿記」での記帳が必要になるということもあるため、理解しておいた方が良いでしょう。
では、レンタルサーバーやドメインを複式簿記で経費計上する際の貸方科目について、注意点をいくつか説明していきます。
銀行振込・自動引き落とし
銀行振込や更新時に自動引き落としがされる場合、貸方科目は「普通預金」もしくは「当座預金」になります。
どちらの口座から振込・引き落としを行ったのかがわかるように、貸方科目を設定しておきましょう。
もし、振込手数料がかかった場合は、利用料を「通信費」などとし、手数料は「支払手数料」として計上してください。
面倒かもしれませんが、手数料までまとめて「通信費」として計上してしまうと、レンタルサーバーやドメイン利用料の証紙(領収書など)との差異が生まれてしまうため、きちんと分けるようにしましょう。
借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
---|---|---|---|
賃借料 | 900 | 普通預金 | 1,000 |
振込手数料 | 100 |
クレジットカードの場合
個人事業主などに特に多いと思われますが、クレジットカードによる支払いの場合、そのクレジットカードが「個人の銀行口座に結び付いている」か「事業用口座に結び付いている」かのどちらかで貸方科目が変わります。
事業用口座を持っておらず、個人の銀行口座を利用しているのであれば、貸方科目を一旦「事業主借」として処理します。
借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
---|---|---|---|
通信費 | 1,000 | 事業主借 | 1,000 |
その後引き落としがあった際に、改めて処理する必要はありませんが、年度ごとに決算を行うときに「事業主借」を整理しなければいけません。
決算時、それまで積みあがった「事業主借」を下記のように「元入金」へ振り替える処理をすることで完了となります。
借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
---|---|---|---|
事業主借 | 1,000 | 元入金 | 1,000 |
なお、元入金への振り替えを行う際は、それぞれ金額を分ける必要はなく、一括で振り替えてしまって構いません。
また、事業用口座に結び付いたクレジットカードの場合は、最初に契約した段階で「未払金」として一時的に計上します。
そして、口座から実際に引き落としがあったタイミングで、「未払金」から「普通預金」などに振り替えるようにしてください。
借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
---|---|---|---|
通信費 | 1,000 | 未払金 | 1,000 |
未払金 | 1,000 | 普通預金 | 1,000 |
個人での計上では非常に手間となったり、決算時にわかりにくくなることが多いので、クレジットカードよりも銀行振込などの方が良いかもしれません。
電子マネーやコンビニ払いの場合
PayPalやPayPayなどの電子マネーにチャージした残高で支払ったり、コンビニで支払いを行ったりした場合には、貸方を「現金」で処理することになります。
借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
---|---|---|---|
通信費 | 1,000 | 現金 | 1,000 |
ただ、電子マネーがクレジットカードと結びついている「ポストペイ方式」の場合は、クレジットカードのときと同様に「未払金」の処理を行わなければいけません。
決済と同時に口座から引き落としが行われる場合のみ、「現金」で処理できると理解しておきましょう。
「按分」が必要となるケース
確定申告を行う際に「按分」という言葉が使われることがありますが、これは期間や用途によって振り分けることを指しています。
レンタルサーバーの仕訳を行う際にも「按分」が必要となることもあり、例えば、長期契約した場合の金額は、使用する年度ごとに経費を割り当てていかなければいけません。
個人の場合はそれに加えて、レンタルサーバーやドメインをプライベートで使用することがあれば、その分は経費計上できません。
このように、「按分」しなければならないケースがありますので、詳しく解説していきます。
長期契約時の仕訳
例えば、レンタルサーバーを2年間の利用で長期契約した場合、初回の支払い時に2年分の料金をまとめて支払うことが多いです。
このとき、最初の年度では「その年度で利用する分の料金」しか計上できず、残りは翌年以降に計上しなければいけません。
「その年度で利用する分の料金」は決算が行われるタイミングによって変わります。
法人の場合は設定した決算月まで、個人事業主の場合は「1月1日から12月31日まで」と決まっているので、締め日となる12月31日までの日数から算出する必要があります。
例として、「年度初めにレンタルサーバーを2年間契約して、2万円支払った」ケースだと、次のような仕訳になります。
初年度の仕訳
借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
---|---|---|---|
前払費用 | 20,000 | 普通預金 | 20,000 |
通信費 | 10,000 | 前払費用 | 10,000 |
翌年度の仕訳
借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
---|---|---|---|
通信費 | 10,000 | 前払費用 | 10,000 |
イメージとしては、一旦一括で「前払費用」として計上し、年度ごとに対応する費用を「通信費」などに振り分けるといった形です。
もし年度途中の場合は、そこから決算月までの分を初年度に計上し、翌年には1年分、翌々年に残りを計上することになります。
「前払費用」を立てず、各年ごとに計上していくことは、「普通預金」の残高と実際の口座残高に齟齬が生まれてしまうため、不可能です。
現実に起きているお金の出入りに合わせるため、必ず前払費用などの科目で一度計上しておきましょう。
個人利用が含まれる場合の仕訳
レンタルサーバーやドメインを個人でも利用することがあるときは、その分を除いた費用を計上することになります。
個人利用が含まれる歳の按分は「家事按分」と言われます。
たとえば、ドメインを5個購入しており、その中の1つを事業用レンタルサーバーを使って個人利用した場合、経費として計上できるのはドメイン4個分の費用と、合理的な割合のレンタルサーバー費用までです。
家事按分する際は、どれだけの費用を経費とするかを自身で決めることができます。
「合理的な割合」というのが少し複雑ですが、この例においては、ドメイン数で割り振って、レンタルサーバー費用の80%程度を計上するといったことになるでしょう。
もしくは、レンタルサーバーとドメインを使用した月日で割り当てるというのも良いかもしれません。
ただし、まったく事業利用がなく、個人利用としてしか使っていないのに経費として計上するのは避けておきましょう。
正しい勘定科目で適切な経理処理を行うこと
どの勘定科目を使うのかはある程度自由ではありますが、無関係の科目で経費計上することは当然ながらできません。
誤った科目や内容で計上していると、確定申告や決算を行った際に税理士や税務署から指摘を受けてしまうこともあるかもしれません。
基本的には正しい感情科目で、適切な処理を行うことを心がけるようにしてください。